著:岡野玲子(原作:夢枕獏)
白泉社
<京都歩きの本棚>
突発的な能登半島地震の発生という思いもよらぬ幕開けとなった2024年。地震や火災、津波などへの不安は、どんなに社会が発展しても消えることはないのだと、改めて思い知らされた出来事でした。『陰陽師』の9巻は平安京造営以来初の大火災となった、天徳4(960)年9月23日の「内裏炎上」が大きなテーマとして取り上げられています。陰陽師として不吉な予兆を感じ取り大きな苦悩を背負う清明と、自らの命を犠牲にしてまで火中の楽器や楽譜を救い出す博雅。いまだ原因がわからないこの大火をめぐるそれぞれの活躍が、深い心情を交えながら精緻かつドラマティックに描かれています。
Comments