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SPECIAL CONTENTS  Page.3 第4号 巻頭対談こぼれ話

ホホホ座浄土寺店・店主

 山下 賢二

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えほん館・店主

花田 睦子

絵本『やましたくんはしゃべらない』著者でホホホ座浄土寺店・店主の〈やましたくん〉こと山下賢二さんと、絵本・児童書専門店・店主でよみ語り家の〈むっちゃん〉こと花田睦子さんによみ語りや本についてお話をうかがいました。その対談のこぼれ​話をwebで特別公開いたします。

絵本ライブ番外編「やましたくんがしゃべります」を開催して

―えほんライブ番外編「やましたくんがしゃべります」では山下さんの著書『やましたくん はしゃべらない』(岩崎書店 2018)の読みがたりとトークライブを行いましたがいかがでしたか?

山下:あの日は花田さんが聞き手という形になっていただいて、大変よかったなと思います。僕もイベントをやるのですが、実は聞き手の方が大変なんですよね。場を回していくというのがあるので。そういうご苦労とか結構あったんじゃないですか?

花田:ありがとうございます。トークライブはめちゃめちゃ勉強になりました。『徹子の部屋』の黒柳徹子さんがすごいなと思いました(笑)。実はイベントのあと結構落ち込んでいて……。

山下:えっ?!

花田:事前に山下さんの本を読んだりして、その魅力をどう引き出そうかと考えていたんですけど、それが十分に出来たのかな?って。来てくださった方も良かったと言ってくださっていましたし、終演後の物販も盛況だったので良かったのかな、ということは思ったんですけども。

山下:僕は途中でゾーンに入ってしまって、喋りすぎてしまったかなって……。

花田:いや、全然!山下節というのが、もっとガンガン出てきても、と思っていたんで!はじめて一緒にトークライブをしたので、山下さんのガンガンがどんだけなのか基準を知らずにやったんですけどね。

山下:でもね、終わった後に本にサインしていて、お客さんが「面白かったよ」って言ってくださっていましたよ。

花田:そう言ってくださってありがたいですね。

山下:ただのトークショーじゃなくて、プロファイリング[1]とかもあっていいブレイクになったんじゃないかと思います。

花田:実はあのイベントで若干味をしめて(笑)。

山下:ははは(笑)。味をしめましたか。

花田:「また誰かとやってみたい」って。もちろん山下さんとも。また機会があればお願いしたいくらいです。

山下:僕、ほんまに花田さんは本を勧めるのが上手いなと思いました。絵本の見どころとか、魅力を伝えることが。こういうところがポイントだというのを勧めるというのを、すごくわかりやすく伝えるなって。

花田:そうですか!ほんまに嬉しい。

山下:やはり、読みがたりで場数を踏んでいるということをとても感じましたね。目の前にいるお客さんにどのようにアプローチをするかということと、その場の雰囲気でどう切り替えていくかというのが勉強になりました。

花田:それは凄く嬉しい。はじめはとてもゆっくりしていたので、途中で残り時間が少ないことに気がついて急に焦りだしたんです。でも、とりあえず全部いってみようと思って。だから本の紹介の時間が短くなってしまったんです。

山下:短い時間で上手に紹介されていると思いましたよ。

花田:それは嬉しいです。そう言ってもらえると。

 

[1]事前にお客様より募集した本棚の写真を見ながら持ち主の人となりを想像する「本棚がしゃべります~持ち主プロファイリング~」という企画をトークライブ中に行った。

やましたくんとむっちゃんの子ども時代

山下:質問してもいいですか?

花田:もちろんですよ。

山下:音読の時間ってあったじゃないですか?

花田:私は、あったかな?実はそんなに国語の授業の時間の記憶がなくって。音読をした覚えがないんです。

山下:僕はなんで覚えているかって言うと、しゃべれへんかったから順番が回ってくるのがすごく嫌だった思い出があって。「山下は無理やしな……じゃあ次の子」っていうのをすごく覚えているんです。

花田:なるほど。

山下:なので花田さんは得意だったのかな?って。

花田:私の時代はなかったんですかね?世代がちょっと違うから?

山下:そうだったんですか?なかったですか?

花田:みんなで読んだことはありますね。でも、あとは記憶にない。

山下:あっ、全文を読むんじゃなくて。例えば宮沢賢治の1篇があったら、1篇の数行を順番に読んでいくんですよ。

花田:宮沢賢治を習った記憶もなくて……、教科書を全然覚えてない(笑)。

山下:僕も詳細は覚えてないですけどね。

花田:本当に見事に覚えてなくて(笑)。遊び呆けていたんです。日常の全てが遊び。朝から晩まで遊び!

山下:何してはりました?

花田:あらゆる遊びをしましたよ。その中で本読むのも遊びやったんですよ。今でも遊びですけどね。晴れていたら外で。おもちゃなんかいらない。秘密基地ごっことか。小学生やったら、どろじゅん、ドッジボール、テニス、サッカー、鬼ごっこ、かくれんぼ、缶蹴り、メンコ、コマ回し…。

山下:外で遊ぶ遊びですね。

花田:一人っ子で鍵っ子やったんですけど、家の中でも自由奔放に遊んでましたよ。友達は児童館とかに行ってましたけど「そんなところは嫌や!」って言って。日が暮れるまで外で遊び倒して、家にいる時は友達とラジオのアンテナを出してネット代わりにしてバレーボールごっことかね。ほんで1人やったら部屋の壁でボールの壁打ちとか。

山下:へー!身体を動かすことが好きだったんですね。本を読んだりより。

花田:はい。好きでしたね。ほんで雨降って、友達いーひん、遊ぶとこないってなったら本。そんな時は家でずーっと本読んで。楽しかったですね。『トム・ソーヤの冒険』をテレビで見たら、イカダを作ったり。あとは「この道はどこに続いているんやろ?」って言って知らん道を歩いてみて、気ついたら山を越えていたりね。

山下:アクティブなお子さんですね。

花田:冒険大好きでしたね。時代もありがたい時代で、大人の目が今みたいに届かない。あれは子どもからしたら好都合でしたね。いちいち見られていないから遊び放題みたいな。その代わり自分で責任とらなあかんけどね。山から落ちて死にかけたとかいっぱいありますけどね。奇跡的に助かったりましたね(笑)。

山下:わんぱくですね(笑)。

花田:わんぱくでしたねー。

山下:男の子みたいですね。

花田:男の子ともいっぱい遊んでいましたからね。楽しかったです。

 

―山下さんは子どもの頃はどうやって遊ばれていましたか?

山下:うーん、家では「なんとかごっこ」とかかな。あとは漫画描いたりね。それを勝手に連載漫画にして、1巻から何巻までとか綴じていました。「映画化!」とか言ったりもしてね。

花田:すごい、すごい。

山下:僕と兄で、山下博賢(ひろけん)って言うペンネームで描いてたんです。「博賢先生に手紙を書こう!」みたいな自作自演をやったり。本当にごっこ遊びですよね。漫画家ごっこっていうか。あとは「オールカラー!」とか(笑)。

花田:(笑)。

山下:単純に色を塗っただけですけどね。そんなんをやったりしていましたね。

花田:面白いですね!

山下:あとは、普通に学校で放課後にドッチボールとかキックベースとか。しゃべれへんでもできる遊びはしていましたね。

本屋さんは〈公園〉?!

―ホホホ座の前身ガケ書房も個性的な本屋さんでしたよね。見た目のインパクトも。(白川通に面した店舗外壁から乗用車が約半分飛び出しているという他に類を見ない外観が目を引いていた)

山下:あれは若気のいたりです。あのルックスっていうのは「俺を見ろ!ここにいるよ!」ということだったんですよ、多分。あれだけ、誰にでも目立つインパクトの強い外観というのは結局そういうことなんですよね。だから後半からは結構恥ずかしくて(笑)。

花田:今はできない?(笑)。

山下:11年やったんですけれど、後半はこのインパクトはもう恥ずかしいと思ったんですよね、認知されたあとは。でも、あれはトレードマークになったし、良くも悪くも勢いであり若さであったんかなって。

―逆に花田さんのえほん館は隠れた本屋さんですよね。

花田:ね、もう隠れたいなと思って。自分から店の外へ出て行く方がいいやって。本屋に限らず「お客さんを待つ」というののいいところは自分か

ら会いに行くのであれば絶対に会わへん人と出会えること。自分から出向くのであれば、やはり気の合う人とか好きな人、会いたい人になるじゃないですか。せやけどね、こうやって今までやってきていろいろな人と出会えてきたのはいいことだなと思いますね。いろいろな人に出会って、その輪が広がって行くのが面白かったりするので。でも、もう店にずっといるのはもういいかなという感じです。来んといてくださいね(笑)。

山下:確かに僕もスタッフに言われますね。「店の外でお金を稼いできて下さい」って(笑)。

花田:ははは(笑)。と言いつつも、専門店なので1番求められるのが選書の仕事なんですけどね。

山下:絵本のみだけでやってはるんですか?

花田:絵本と児童書と。

山下:すごいなぁ。 

花田:いやいや、業界の落ちこぼれ。今はちょっとましにはなっているけども。

山下:自分の足で立ってはったら、もう落ちこぼれじゃないですよ。

花田:そうやね。まずは、立ってられてなんぼですね。

―専門店と大型店は違いますが、専門店ならではの良さを感じますか?

山下:僕とかはどちらかと言うと、隙間産業ですね。網羅している大型店ならば差しで入っている本も面で見せてあげて、「こんな本あったんだ」って思ってもらう。もしくは目的の本に行きたい時に、探す手間を省いてあげるとか。いかに1冊、1冊、すべての本を認識してもらうかっていう店作りです。もちろん歯抜けではあるんですよ、A-Zの話で言えば。でも僕は役割の違いだと思っています。〈確認の買い物〉と〈発見の買い物〉があるとしたらホホホ座は〈発見の買い物〉で、提案型とも言うかな。むしろ目的を決めずに来てもらうような店作りだから。もちろん網羅型の大型店と専門店が両方ないといけなくて、そういう土台があって僕らはその手のひらで遊べていますね。

花田:そのへんの考え方は本当に山下さんに教えてもらいました。ハッとしました。考え方が変わりました。

 

―絵本ライブ番外編でのトークライブで山下さんは「本屋さんは〈公園〉」とおっしゃられて面白かったです。

山下:本当に誰でも入れるということが大きなことですね。今は本屋さんだったり、CD屋さんだったり、子どもやお年寄りとか何の仕切りもなく誰でも入れる空間というのが減ってきていて。例えば洋服屋さんや雑貨屋さんは入れますけれど、子どもやお年寄りもスッと入れる場所ではなくて。でも、本って児童書から健康長寿の本まで間口が広くて、誰でも入れてリラックスできます。そして、全ての本が(場所や時代を超えることが出来る)扉でありタイムマシンである。こんなに面白い開かれた空間って〈公園〉やなって。その〈公園〉を管理する人が店長さんで、管理費はみんなで本を買うという行為で賄って、場所を守っていくという仕組みがかつてはされていたのかなって。それがなくなる時は、やはり外部の人たちが大きく関わっていると思いますね。もちろん色々な物理的な理由であったり、来てもらうという優先順位を上げられなかったという僕らにも要因はあるんですよ。

花田:私も出来るだけ気に入った書店で買うようにするというのは思いますね。

山下:住民投票をしている感じです。そのまちで本屋さんがなくなるということはそのまちの投票の結果が出たという。

花田:現実はそうなんですよね。えほん館をやっていても、「本を買うときはえほん館で」と決めてくれてる人がいはってありがたいですね。

山下:お店に対する愛を感じますよね。本という単位でなくて、店という単位で見ておられますよね。

花田:この前、初めて出張えほん館というのをやらせてもらったんですね。その時に絵本の話もさせてもらって、新刊を中心に並べていたら盛況でした。だから、そういう本との出会い方をどう用意するかという部分はあると思いました。

山下:そうですね。提供する側もプレゼンテーションを変えてみるとかアピールする努力は必要だと思うんです。ほっといても「誰か来るやろ」でダメなのは当たり前やし。だから店側のやるべきことは、その場所を使ってもらう、また来たくなる空間を提供するというのが1番のすべきことだと思っています。そして、それを周りの方に受け取っていただける関係性を作ることが理想ですよね。

【山下 賢二 Kenji Yamashita】

2015年4月1日、「ガケ書房」を移転・改名し「ホホホ座」をオープン。著書に『ガケ書房の頃』(夏葉社 2016)、編著として『わたしがカフェをはじめた日。』(小学館 2015)など。絵本の文章は、『やましたくんはしゃべらない』(岩崎書店 2018)が初の作品となる。

http://hohohoza.com/

 

【花田 睦子 Mutsuko Hanadai】

高校卒業後、証券会社に就職。1987年に会社勤めをしながら、絵本・児童書専門店「えほん館」を無店舗でスタート。1991 年に伏見区で店舗を開店。1999 年に西京区に移転。店舗営業のほかに、絵本の素晴らしさや大切さを伝えるための講演会や販売会を実施。2012年9月から嵯峨美術大学非常勤講師。

https://ehonkan-kyoto.com/