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SPECIAL CONTENTS  Page.3 第6号 巻頭対談こぼれ話

児童文学作家・評論家

 ひこ・田中

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中京区小学校図書館ボランティアネットワーク

柴田 歩

児童文学作家として『お引越』『ごめん』「なりたて中学生」シリーズ等数々の作品を著し、京都新聞「子どもの本から世界を見れば」(毎週水曜日)を連載するなど評論家としても活躍中のひこ・田中さんと、子どもの読書環境の向上に取り組む中京区小学校図書館ボランティアネットワークの柴田歩さんにお話をうかがいました。その対談のこぼれ​話をwebで特別公開いたします。

子どもに読ませたくない本との付き合い

―お子さんに本を勧めるにあたって、「この本は子どもに読ませたくない」と言われる本もありますよね?

 

柴田:そうなんです。学校の図書館でもご指摘を受けることがありますね。性的描写などは気にされる方が多いです。

ひこ:それは、保護者から?

柴田:そうです。お子さんが学校の図書館から借りてきた本を見て「こういう描写があるから、子どもには読ませたくない」という意見ですね。そういうご指摘があった時は先生と相談します。子どもの年齢に応じた本を与えるということは大切なことなのですが、気にし過ぎると検閲のようになってしまいますよね。私は絵本から良い本、それから悪い本まで経験した方がいいと思うんです。自分で読んで判断できる強さを持って欲しいです。だから、いろいろな本があることはいいと思います。そういうものはたとえ図書館や大人が規制したとしても、子ども同士で勝手に見つけて読んでいたりするんですよね。

ひこ:ダメだと言えば言うほどね。

柴田:厳しくすればするほど、子どもは隠れて読みますからね。「年頃の子どもたちなら好奇心から読むよね」と思える大人と、「そういうものは読ませたくない」と思う大人もいて、考え方はそれぞれだと思います。

ひこ:表紙などのビジュアルが露骨になっていることは確かだね。そうやってしないと売れなくなるから。中身は関係なくどんどん過激になってきている。ライトノベルも、BLもそうなんだけど。問題はそこにジェンダーの問題あることだね。過剰な露出の表現とか。そういうものが増えてくることには、やっぱり大人が口を挟む必要がある。

柴田:そうですね。

ひこ:中身は関係なく、男の子たちは面白がって読んでしまうから。それは年齢的にしょうがないんだけども。そういうことに対しては大人の口出しが必要だと思います。

柴田:そういうものを見た時に自分で判断を下せる大人になっていて欲しいと思うんですよ。

ひこ:そうそう。最初からそういう意識があればいいんだよね。そういうものがある現状はしょうがないんだから。それらは図書館で読まなくても、書店に行けばいくらでも読めてしまうから。だから、隠してもしょうがなくて。そこにあるものがどういう本なのか子どもが自分で判断できれば問題ないんです。

柴田:こういう本もあり、こういう本もある。子どもが読みたいと思うことに私は規制はかけないですが、それが良いか悪いか判断できるようになっておいてほしいですね。親の目が届く期間は短いじゃないですか。いろいろと言いたい期間もあると思うんですけども、どんどん子どもたちは外に向かって行ってしまいますから。それを引き止めることはできません。

ひこ:親の目がちゃんと届くのは10年ぐらいだよね。

柴田:そうですね。私は今次男が高校3年生なんですけど、もう何も言えませんね。ただそれまでに何か核になるものがあれば、「この子はきっと大丈夫だろう」と信用して外に出せるわけじゃないですか。それまでの期間を大事にしておいたら「好きなようにしていいよ」と言えるんじゃないかなって。まだ子育ての途中なので、私もどうなるかわかりませんが。親は子どもを信じるしかないですね。それには良い物も悪い物も知っているからこそで、純粋培養みたいに悪い物から全部遠ざけて、無菌室で育てたような子どもだったらきっと私はどこにも出せなかっただろうなって思います。

ひこ:どこにも行かずに、ずっといるんなら良いんだけどね。

柴田:家の中でずっと養い続けられないですからね。ひきこもりやパラサイト・シングルが問題になっていますよね。子どもって外へ向かって行きたいものだと思うのですが、親がなんらかで引き止めてしまっていることもあるのではないかと。外に出て欲しくないと言う気持ちだとか。中学校でも学校に行けない子どもが増えていて、そういう保護者の方からの相談を受けたりもします。そういう時にお母さんも変わらないといけないかもしれないと思いましたね。私たち親も変わるべき部分があるかもしれません。

今オススメの本

―今、ひこさんがイチオシの本はありますか?

ひこ:この本なんだけど、『希望の図書館』と言うタイトルがすごいよね。この本は1940年代のアメリカの話。主人公のラングストンは南部のアラバマに住んでいたのだけどお母さんが亡くなって、一命発起してお父さんが息子と一緒にシカゴまで移る。当時は奴隷反対派だった北部に逃れた黒人の人たちがたくさんいたのね。亡くなったお母さんは本好きでずっと読んでいたんだけども、お父さんは「本なんて読んでいる暇があるなら、薪割りを覚えろ」と言って薪割りを教えたりしていたんです。

柴田:ありがちですよね。

ひこ:だから、彼はシカゴに来て初めて本にふれるんです。黒人でも自由に入って読んでいい図書館があったから。本当はそれが当たり前なんだけどね。でも、お父さんには隠れてこっそりと本を読むわけだね。主人公のラングストンがそこで出会うのが自分の名前と同じラングストン・ヒューズの詩集です。そこには黒人の日々の気持ちがたくさん書かれていて共感するんです。

その間の学校でのいじめとかいろんなことが描かれていくんですけども。ヒューズの詩を読んでいる中で、ラングストンがこっそり読んだお母さんとお父さんのラブレターの中にお母さんがお父さんに宛てて書いた言葉だと思っていたものがヒューズの引用だと発見するのね。お母さんはヒューズが好きで、お父さんへ想いを伝える時にヒューズの詩の一節を書き写していたことが彼にはわかってくるわけね。そこから謎が解けるわけですよ。なんでラングストンという名前をお母さんがつけたのかとかね。いいでしょ、それだけでも。

柴田:いいですね!

ひこ:最後の方では同じようにいじめられていた子と、読んでいる本をきっかけに友達になるのね。その友達がなんでラングストンが本を読んでいるか、言葉にする場面があるんです。「お前が読んでいる詩は、自分の中で感じていることを、自分の外に出す方法なんだよな」って。なんで詩を読んでいるかというと、心の中にある感情を整理して外に出すためにラングストン・ヒューズの詩を読んでいるということを言ってくれているんだよね。まさに図書館に関わる人にとって夢のような、聖書のような話だよね。ラングストンは自分が黒人として置かれている立場とか、その中でモヤモヤしていることをヒューズの言葉で理解していく。この本を読むと子どもにとって本が、どのように気持ちを豊かにして、気持ちを楽にしていくかわかるよね。まさに本を読むとはどういうことなのか非常に良くわかる本です。

柴田:すごく読みたくなってきました!子どもによみ語りをする時に、本を広げて子どもに近づいて行くと子どもって逃げるわけですよ。そこで食いつく子はなかなかいないですよね。知らない大人がニヤニヤしながら本を持って来たら、子どもは逃げてしまいます。

ひこ:危ない大人に見えるかもね(笑)。

柴田:そこで、私たちがやっている絵の本ひろばという企画では、会場に絵本の表紙を出して見やすく並べて置くんです。子どもが自分で見て回って気になった本を持ってきてもらって、その場で一緒に広げて読むことができたらいいなと思ってやっているんです。「寝る前は子どものために本を読んであげたい」と思っていても選書がわからなかったり、子どもが本に慣れていなくてどうしたらいいか悩んでいる親御さんもいるかもしれない。そこで開放的な広場にたくさん絵本が並んでいる空間を作ってあげると、子どもが持ってきた本を自然と読める気がします。こちらは読んで欲しい気持ちは満々なんだけど「読め」と言って一方的に本を与えるのではなく、子どもが自発的に興味を持てるように工夫して展示することで手に取ってもらえる。そういうあからさまに「読め」と言わない勧め方みたいなものをこれから工夫して行ったら面白いんじゃないかなと思っています。

ひこ:そのためには大人自身も本を楽しまないとね。「読みなさい」と言わなくても、そこに本しかなかったら勝手に読むんだよね。そこで、本のある空間に一緒に行くとかで、本は手に取って読むもんやなっていうのを1、2歳の時に慣れてもらう。手にもとらない子もいるのでね。本の匂いを好きになってもらわないとね。

柴田:本の匂い、良いですよね。古い本の匂いも好きだし、新しい本の匂いも好きです。

ひこ:いいよね、本の匂いって。

【ひこ・田中  Hiko•Tanaka】

児童文学作家・評論家。著作に『お引越し』(椋鳩十児童文学賞)、『ごめん』(産経児童出版文化賞JR賞)、『なりたて中学生 初級編・中級編・上級編』(日本児童文学者協会賞受賞)など。京都新聞にて連載中の「子どもの本から世界を見れば」(毎週水曜日)では大人に向けて「子ども向けに作られたこの本は面白いですよ」と言う切り口で紹介することで子どもへ本を届ける。

 

【柴田 歩  Shibata Ayumi】

子どもの入学を機に小学校図書館で保護者ボランティアをはじめ、中京区内の小学校で子どもと本の間に立つ方々を応援するために中京区小学校図書館ボランティアネットワークを設立。立誠図書館で毎月開催中の絵本ライブを共催のほか「絵の本ひろば」の開催。2019年には「大人のまなび舎~子どもと本をつなぐ 大人のためのまなびと出会いの2日間~」にてひこ・田中さん、あべ弘士さん、近藤薫美子さんを講師として招き講演会を開催するなど精力的に活動中。

読者プレゼントコーナー

【応募締め切り:2020年3月31日(火)】

立誠図書館機関紙『Page.3』読者のみなさんにひこ・田中さんサイン入り著書『お引越し』をプレゼントいたします。

11歳の少女レンコはとうさんとかあさんが離婚し、お家がふたつになります。両親の離婚という大人の事情に巻き込まれたレンコのとうさんとの関係、かあさんとの関係、友達にどう話すかなど複雑な心模様が描かれています。80年代の京都が舞台で、登場人物たちの京都弁、まちの描写なども見所です。初版は1990年、福武書店より発刊。今回の読者プレゼントでは現在の日本を代表する美術家、奈良美智が書き下ろした装丁が目をひく2013年に福音館書店から発刊されたバージョンです。

 

◾︎商品・当選人数

ひこ・田中さんサイン入り『お引越し』(2013 福音館書店)

3名様

◾︎応募方法

下記URL(QRコード)の応募ページ、もしくはハガキにてご応募ください。

 

インターネットでのご応募

https://forms.gle/CqPkgx2wE59dYgM9A

ハガキでご応募の場合、以下の項目を記載の上お送りください。

  1. 氏名

  2. 郵便番号

  3. 住所

  4. 年齢

  5. 性別

  6. 電話番号

  7. メールアドレス

  8. 立誠図書館や機関紙『Page.3』のご感想をお書きください

 

送り先

〒604-8023

京都市中京区蛸薬師通河原町東入備前島町310-2

立誠図書館

 

◾︎応募締め切り

2020年3月31日(火)

◾︎抽選方法・当選発表

ご応募いただいた方の中から抽選を行い、当選者を決定いたします。当選の発表はプレゼントの発送にもって代えさせていただきます。

 

応募いただいたお客様の個人情報(氏名、住所、電話番号、年齢、性別、メールアドレス等)は厳重に管理し、本プレゼント企画および立誠図書館からのお知らせのみで使用させていただきます。