著:原田マハ
徳間書店
<食べる本棚>
アートをテーマにした小説を得意とする原田マハさん。立誠図書館にも4冊の蔵書がありますが、5冊目となる本書はむしろ美術との関連は薄く、引きこもりの若者や痴呆症のお年寄り、過疎化の農村などの社会問題に焦点を当てています。物語は、いじめをきっかけに4年間自室にこもりきりの主人公が、唯一頼りにしていた母親の蒸発によりひとり窮地に立たされたところからスタート。否応なしに世間に放り出された主人公はこのできごとをきっかけとして、長年忘れていた感覚=「生きている実感」を取り戻していきます。閉塞感のある今の時代に「地方」の視点から一石を投じる本書。その波紋が都会の若者にまで届きますように。
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