著:内田百閒
灯光社
<世界の入口となる本棚>
幻想的な短編小説とユーモアあふれる随筆で知られる内田百閒。とくにその随筆に関しては、貧乏な自身の生活などを臆面もなく晒しながらあくまでもカラッとしているところに好感が持てます。本書には頭皮にできものができて床屋に行くのにも苦労する情けない状況を描いた『掻痒記』や、肺結核で死の床にある孤独な元芸妓の愛人のもとを訪ねた様を淡々と描いた『昇天』などを収録。『漱石先生臨終記』は生前気前よくお金を貸してくださるなど著者に優しく接してくれた漱石先生への、著者のひとかたならぬ愛情が文章からじんわりと伝わってきます。

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