著:オルガ·トカルチュク
白水社
<世界の入口となる本棚>
ポーランドにずっと憧れを抱きつつも、ポーランド文学を読んだのはおそらく初めてです。著者も訳者も「万人にとって理解しやすいわけではない」と認める中欧文学。家庭を捨てて浮浪者となった女性の話である表題作の「逃亡派」や妻と子に数日間失踪された男性の話「クニツキ」など、本書も首尾一貫してその独特な共産主義的暗さ、閉塞感、陽の当たらないジメジメした感覚に包まれていますが、なぜか心に響くものがあります。エッセイ風の短編を寄せ集めた中に表題作のなど数作の中編が織り込まれた不思議な構成は、見知らぬ街をひとり彷徨うような趣向となっています。

תגובות