著:水上勉
新潮社
<京都歩きの本棚>
戦後まもない1950年に世間を震撼させた金閣寺放火事件の真相に迫った、限りなくノンフィクションに近いフィクション作品。私の関心は、京都で活躍した作者が京都の寺院のどす黒い部分を、実際どこまでえぐり出せるのか?というところにありました。その点において賢明な作者は、自らの言葉を語るというよりも、関係者の証言を第一とし、小さな調査を積み重ねることにより揺るぎない主張を築くことに成功しています。禅の教えと、それとは矛盾する拝金主義との狭間で苦しんだ若僧の想いが、淡々とした文章から痛々しく伝わってきます。
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