著:平野啓一郎
文藝春秋
<京都歩きの本棚>
架空の他人の人生にかまけている余裕がない私は、めったに小説というジャンルの本を読むことがないのですが、平野啓一郎さんの小説は、彼特有の知性が感じられる文章やミステリアスなストーリー展開に魅了されます。もっとも、この『ある男=A MAN』は事実を基にフィクションで肉付けした作品とのことで、その点が話に説得力を持たせているのかもしれません。他人と入れ替わって生きる『ある男』の正体を探るうちに、彼の生きざまに思いがけず感情移入していく主人公の心の変容が丹念に描かれています。
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